夜空の琥珀~名前は○○の代名詞~
ランチタイム!
白のアクリル絵の具を重ねたような、入道雲。
鮮やかな空色キャンバスの中央には、さんさんと輝く太陽。
「ねぇ、名前ってなんだと思う?」
中庭でのランチタイム。
いきなり脈絡のない質問をしてきたのだから、若葉くんがぎょっとして箸を動かす手を止めたのは、当然の結果だと思う。
「どうしたの? やぶから棒に」
「いやね、さっきの日本史、途中から先生の言葉が呪文にしか聞こえなくなっちゃって」
「あらら……」
「英語ならわかるんだよっ! でも漢字が並んでると頭痛がするというか……ほら、さっきやった坂……さか……えーと……」
「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)」
「そうそれ! 坂の上にいる田村の麻呂さん」
「ではなく平安初期の征夷大将軍」
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