夜空の琥珀~名前は○○の代名詞~
「澤山先生って、言いたいことは何となく伝わってくるんだけど、独特すぎる言い回しをするのが玉にキズだよね」
「えっ、若葉くん意味がわかるの?」
お弁当箱のフタを閉めながら、「何となくだけど」と前置きした上で、口を開く若葉くん。
「名前は、単に人を区別するためだけのものじゃないと僕は思うんだ」
「たとえば?」
「説明しようとすると理屈っぽくなるからな。……ちょっと待っててね」
若葉くんはおもむろにメモ用のちいさなノートを取り出すと、胸ポケットに入れてあったシャーペンをさらさらと走らせる。
「はい」
見やすいように向きを変えて差し出されたページには、「瀬良」と私の名前が記されていた。