濃紺に染まる赤を追え。
「んーと、二年生の春からだったっけ?」
「え?」
「陽子ちゃんが探しに来るようになったのって」
探しに来るっていうのは、つまり。
「桐谷のことをですか?」
言外に含まれた意味を尋ねると、先生はゆっくり頷いた。
「そうですけど……」
「じゃあもう一年とちょっとなのね」
そっかそっか、と納得したように何度も頷いて、先生は微笑んだ。
「明日もまた探してあげてね」
どうして急にそんなことを言うのだろう。
不思議だったけれど、深く聞くことはせずにぺこりと頭を下げる。
マグカップを口元に近付けながら、手をひらひらと振った先生。
ドアを閉めると、その姿は見えなくなった。
そのまま方向転換して、階段へ向かう。
暗い灰色の雲が雨を注ぎ、窓から差し込む光を隔てていた。