濃紺に染まる赤を追え。





短く名前を呟いた。

そして、ぐっと腕を伸ばして遠ざかる。



拒絶を示せば、すぐにグリーンの力は弱まった。



傘から抜け出して立ち上がる。



再び、降り頻る雨の中。

緑と赤のクリスマスカラー。

濡れた視界。





「……教室、戻るね」



ザーザーと激しく雨が地面を打ち付ける音に、わたしの呟きは隠れたかもしれない。

声になっていたか分からない、小さな小さな、吐息のような言葉を落とし、青いドアへと足を踏み出した。





ギイ、バタン。


世界を遮る。














桐谷がどんな顔をしていたか、なんて。

怖くて見ようともしなかった。




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