濃紺に染まる赤を追え。
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「いらっしゃい、……って、あら?」
雨か涙か、よく分からない水滴が、その優しい顔を滲ませていた。
心地好い冷気を感じる。
「あらまあ、びしょ濡れじゃない」
柔らかく、温かい手に腕を引かれた。
ぐしょぐしょのハイソックスで保健室の中へ入る。
「ほらほら、可愛い顔が台無しよー?」
真っ白のタオルで顔を拭かれた。
柔軟剤の匂いが離れていく、と思ったら、よし、と満足げに微笑む先生の顔がはっきりと見える。
「あ、ジャージ出そっか。キャミ透けちゃってるしね」
わしゃわしゃとわたしの髪を拭きながら、にこりと微笑む。
何があったの、と聞かない先生の優しさに包まれたようで。
わたしは小さく頷いた。
「じゃあ、ちょっとそこ座っててー。出してくるから」
言われた通り、指差された椅子に座る。
ぼんやり、薬品が並べてあるガラス棚を眺めていると、先生はジャージを抱えて戻ってきた。