濃紺に染まる赤を追え。
と、その時。
「えーっ、まじで!?」
どっと騒がしくなる、教室の中央あたり。
何事かと目を向ければ、茶色に染めた髪をくるっと巻いた女の子たちが輪を作っていた。
「蓮とホテル行ったの!?」
「まじ? いいなー!」
「やっぱり良かったっしょ?」
デリカシーというものがないのかな。
頭の片隅ではそんなくだらないことを思うけれど、“蓮”という単語に反応してしまったのは確かで。
「えー、なんていうかぁ……」
話し始めるその声に耳を塞ぎたくて、そっと視線はお箸を持つ手に戻した。
桐谷は結局、誰でもいいんだ。
寂しさを紛らわしてくれる女の子なら、誰でも。
現に、あのグループの子たちの大半は、一度は桐谷に愛されたことがあるという噂を聞いたことがあるし。
そして、何より。
「あー……、蓮の話かー……」
ぼそっと呟いたナミさんに顔を上げる。
その視線は、いまだあのグループに注がれたまま。
香水だろうか。
甘ったるいバニラのような香りがしたかと思えば。