濃紺に染まる赤を追え。
「こっち来てくれる?」
すぐそばのベッドの近くを指差され、頷き、立ち上がる。
わたしがそこへ移動すると、先生はベッドの上にジャージを置いて、白いカーテンに手を掛けた。
「着替え終わったら言ってちょうだーい。なるべく早く着替えちゃってね」
シャッと音を立てて、カーテンが閉まる。
ベッドとわたしだけ囲われた空間の中。
ちらっと視線をジャージに向けて、そっと深呼吸をした。
リボンに手を掛けてみたけれど、指先が震えた。
上手く外せない。
早く、と自分を急かしてみても逆効果で、余計に震える。
ひどく、混乱していた。
ただ、その他大勢でよかったんだ。
でも、あの腕を拒まなかったら、他の女の子たちと同じ立ち位置になりそうで嫌だった。
矛盾している自分の思考がよく分からない。
だんだん欲深くなっていく自分が怖い。
本当は気付いている。
自分がもう、その他大勢では我慢できないのだということを。
でも、わたしにそれ以外の立ち位置が与えられていないのだということも。
「そろそろ着替えたー……ってあら、まだそんな格好だったの?」
リボンと格闘すること数分。
返事もしていないのに、白いカーテンから顔を覗かせた先生がわたしの格好を上から下まで眺めて呟いた。