濃紺に染まる赤を追え。
左に曲がると、すぐに見えた空き教室。
倉庫のような扱いになっているそこは、普段誰も近付かない。
とりあえず、一番手前にある教室をドアから覗く。
埃を被った机と椅子が積んであって、誰かに見つかりそうな気配はない。
掛け時計は正常に動いているらしく、秒針は小さく時を刻んでいた。
それを見る限り、チャイムが鳴るまでまだ時間がある。
「よし」
音を立てないように、ゆっくりドアを開けた。
「……う、わ」
かなりの間、誰も換気しなかったのだろう。
空気が悪く、小さく咳き込む。
積まれた机と椅子のタワーを避けながら、真っ先に窓へと向かい、それを開ける。
流れ込んできた風は生温かったものの、空気は一気に入れ替わっていく。
幾分か過ごしやすくなった教室の中を、窓辺からぼんやり眺める。
たまに、舞っている埃が窓から差し込む光できらきらと見えた。
埃なのに、綺麗だと思ってしまうのは、どうしてだろう。
そんなことを考えながら、そばにあった机の落書きを読んでみたり、黒板のチョークを数えてみたり、たまに時計に目をやったり。
とくに何をするわけでもなく、時間が過ぎるのをただ待っていた。
けれど。