濃紺に染まる赤を追え。







「……、え?」


カタッ、と聞こえた物音。

わたししかいないこの教室で、わたしが動いてもいないのに鳴るはずはないその音。


風かもしれない、と思いながら、窓を閉めてみる。

そして、耳を澄ます。


すると。



「……また、だ」


再び聞こえた物音。

よくよく聞いてみると、それは隣の教室からするようで。

でもそれは、どう考えても可笑しなことだった。



というのも、今の時間は授業中で。

階段を挟んだ向こうでは人がたくさんいるけれど、この教室と隣接しているのはここと似たような空き教室だけのはず。


「……何だろう」


音の正体が知りたくて、足音を潜めて教室から出た。

そして、さっきと同じように、なるべく音を立てないようにドアを閉める。

廊下はいまだ閑散としていて。

見渡す限り、やっぱりわたししかいなかった。




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