濃紺に染まる赤を追え。



誰かに見つからないように、と。

それだけ祈りながら、隣の空き教室へと足を進める。

好奇心だけで動くなんて、わたしの柄じゃないな、なんて。

微笑しながら思った。



カタッ、と。


また聞こえた物音。

さっきより大きく聞こえる。

やっぱり、隣の教室からしていたみたいだ。



確信を持ち、また一歩、近付く。

そして、ひとり分の間隔が開いていたドアから、その中を覗いた。








でも。




やっぱり、わたしは好奇心で動くべきじゃなかった。


柄にもないことをするべきじゃなかった。




気にしないでいることは出来たはずだった。










「……蓮、慰めてあげよっか」







わたしはまた、自分で自分の首を絞めている。




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