濃紺に染まる赤を追え。
積まれた机と椅子のタワー。
その奥に見えたシルキーアッシュ。
グリーンのカーディガンは、入口近くの床に脱ぎ捨ててあった。
あ、と思う。
桜色は妖艶な弧を描いて。
組み敷いた女の子に、どろどろに溶けそうな甘ったるい視線を注いでいた。
それはきっと、わたしに向けられることなどないのだろう。
「……、」
思わず後退り。
一歩足を引いただけだったのに、ぺたり、スリッパが廊下と力無く音を立てた。
その途端。
ちらっと、こちらを向いた桐谷の顔。
わたしの目と合った瞬間、それはさっきの甘ったるいものと打って変わる。
どうして、と桜色が動いた気がした。
驚いたように見開かれた目は、ゆっくりと感情をなくしていく。
無機質で冷たい、射るような視線。
来るな、とその目が語っていた。