濃紺に染まる赤を追え。



苦笑いで頷くと、満足げに先生は笑みを深めた。

カーテンに隔たれ、その笑顔が消える。

遠ざかっていく足音を聞きながら、大きく息を吐いた。


ベッドに潜ったからといって、必ずしも眠れるわけでもなく。

白に包囲された空間の中、ぼんやり天井を眺めた。



三限目は、憂鬱だ。


何もすることがないし、嫌でも頭の中は桐谷で支配されてしまうから。



「……、はあ」


諦められると、思ったんだけどなあ。


そんな考えは、浅はかだったみたいだ。

だってほら、また考えてしまっている。


教室の中央のグループの女の子たちの会話を盗み聞きしている限り、桐谷にとくに変わった様子はない。

毎日毎日、女の子を取っ替え引っ替え。

寂しさを埋めるため、人の温もりを求めている。




もっと、動揺してくれても良かったのに、と。


どこかで、また期待していた自分がいた。



懲りないなあ、わたし。

愚かな望みに自嘲するような吐息が出た。




< 131 / 192 >

この作品をシェア

pagetop