濃紺に染まる赤を追え。
苦笑いで頷くと、満足げに先生は笑みを深めた。
カーテンに隔たれ、その笑顔が消える。
遠ざかっていく足音を聞きながら、大きく息を吐いた。
ベッドに潜ったからといって、必ずしも眠れるわけでもなく。
白に包囲された空間の中、ぼんやり天井を眺めた。
三限目は、憂鬱だ。
何もすることがないし、嫌でも頭の中は桐谷で支配されてしまうから。
「……、はあ」
諦められると、思ったんだけどなあ。
そんな考えは、浅はかだったみたいだ。
だってほら、また考えてしまっている。
教室の中央のグループの女の子たちの会話を盗み聞きしている限り、桐谷にとくに変わった様子はない。
毎日毎日、女の子を取っ替え引っ替え。
寂しさを埋めるため、人の温もりを求めている。
もっと、動揺してくれても良かったのに、と。
どこかで、また期待していた自分がいた。
懲りないなあ、わたし。
愚かな望みに自嘲するような吐息が出た。