濃紺に染まる赤を追え。





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結局、美味しくコーヒーをいただいて、チャイムが鳴るのと同時に保健室を出た。


重たい足を引きずりながら教室まで戻る。

暑い廊下には、相変わらずひとけは少なく、移動教室の生徒がそそくさと歩いていく。

途中、肩にタオルをかけていた女の子が、生徒指導の先生に注意されていたのを見た。


窓の外は、何とも言えない曇り空だった。

このまま晴れても、はたまた雨が降ったとしても、どちらに転んでもおかしくないような、そんな曖昧な空。


悠長に眺めながら歩いていると、誰かに思いっきりぶつかってしまい、頭を下げた。

ちゃんと前を向いて歩こう、と肝に命じて再び廊下に視線を向ける。



そのままずるずると足を引きずるように教室の後ろのドアから足を踏み入れた途端。


カコーン、と何かがおでこに正面から当たった。

突然のことによろけてしまい、ドアに手をつくと、ガタッと派手に音がする。


「わっ、ごめん松村さんっ!」

「ちょ、お前なにしてんだよーっ」


わたしの足元に落ちていたのは紙を丸めたようなボール。

謝ってくる男の子たちは、手にペットボトルを持っていた。

どうやら野球がしたかったらしい。


「ほんとごめんっ!」

「あ、ううん」


わたしもぼーっとしてたから、と言いながらボールを拾って渡すと、男の子は安堵したように笑顔を見せた。



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