濃紺に染まる赤を追え。



「松村ちゃん。ほら、あの二つ結びのー」


嬉々とわたしを指差す女の子たち。

ゆっくり動くシルキーアッシュ。



やめて、こっちを向かないで。



「……っ、」


咄嗟にわたしは目を逸らし、がさがさと音を立ててノートを仕舞う。

誰でもいいから、早く違う話題にしてくれないだろうか。

人任せな希望を抱きながら、忙しなく手を動かして、顔を上げずに耐える。

堤くんが何か言いたそうな目をしていることには気付いてたけれど、意地でも顔を上げなかった。



「……ふーん」


そんな抑揚のない声が聞こえた。


ぴたり。

動かしていた手が止まる。


次に何を言うのか、と。

そっと耳を澄ませていたけれど。



「そういえば、次の授業ってなに?」


まったく見当違いの言葉に、正直拍子抜け。

驚いて顔を上げれば、不意に絡んだ視線。


じっと、何を考えているのか分からない目をして。

何か言いたげだけれど、真意を読み取ることは出来ず。


ただ、世界から切り取られたような無言のぶつけ合い。



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