濃紺に染まる赤を追え。
「気になる生徒がいたのよ」
不意に先生の声が聞こえた。
「みんなに笑顔を向けて、みんなから愛されることを願っている子でね」
その独り言のような言葉は、きっとわたしに向けられているものだろう。
「ぼんやりしていることも多かったし、行動も衝動的だったわ」
ぎゅっと身を縮める。
シーツがかさりと音を立てた。
「一年生のときはそれなりに大変だったんだけど。二年生になってからだいぶ落ち着いてきて、穏やかな顔をするようになったの」
ただ、白いカーテンを見つめていた。
そしたらやっぱり桐谷が浮かんでしまって。
「きっと、あなたのおかげね」
強く強く、目を瞑った。