濃紺に染まる赤を追え。
描いた夢に色塗りして
気付けば眠りに落ちていたみたいで、聞こえたチャイムで起こされた。
ちょうどSHR終了のチャイムだったらしく、掃除当番の生徒たちがガヤガヤと騒がしく保健室に入ってきたので、追い出されるようにして廊下に出た。
放課後先約がある、と言っていた桐谷と鉢合わせになることはないだろうと、のんびり教室まで歩く。
「うっわ最悪、雨降ってるー」
すれ違いざま聞こえた誰かの声に顔を上げて、窓の外を見た。
しとしと、しとしと。
小雨のようだけど、確かに雨は降っていて。
傘あったよね、と思っているうちに教室に着く。
「……あ、松村」
誰もいないと思っていたのに聞こえた声。
顔を上げると窓の鍵をチェックしていた堤くんと目が合った。
「もう、頭痛は大丈夫?」
「……えっと、……うん、大丈夫だよ」
仮病なのに心配してくれているのが少し申し訳なくて、曖昧に微笑みながら自分の席に向かう。
鞄に荷物を詰め込み、引き出しから日誌を取り出した。
ストライプ柄のシャーペンをカチカチ鳴らすと、もう戸締まりを終えたのか、堤くんはこっちに向かってきた。
そして、わたしの前の席である自分の席に後ろ向きに座る。
向かい合うような形になったものだから、つい、視線を上げた。
「……堤くん、今日は部活?」