濃紺に染まる赤を追え。
―― “だから、松村、笑って”
教室は静寂に包まれていた。
わたしがシャーペンを動かす音だけが響く。
脳裏にちらつくのは、去っていった堤くんの後ろ姿。
わたしがいつまでもはっきりしないから。
あんなことを言わせてしまった。
それなら尚更、いっそう早くこの気持ちを消さないと。
そう、強く思う。
「……失礼します」
軽くノックして職員室に入ると、今日もふくよかなお腹を携えて、豚まんはゼロカロリーと大きく書かれたゼリーを食べていた。
ついにダイエットにでも目覚めたのだろうか。
「おー、松村」
日誌を渡すと、交換するかのようにキャラメルを渡される。
それをいつものようにスカートのポケットに突っ込もうとすると、そこには未開封のままのキャラメルが大量に溜まっていて。
ああ、そうか。
消費されないとこういうことになるんだっけ、と。
他人事のように思いながら、無理矢理ポケットに押し込んだ。