濃紺に染まる赤を追え。
「よっこ、逃げんな!」
代わりに聞こえたのは、そんなテノール。
同時に、引かれた手首。
つんのめりそうになるのを、必死で爪先で支える。
「や、だっ」
思いっきり腕を揺らし、振り払おうとしたけれど、びくともしない。
スリッパを履いていない足。
紺色のハイソックス越しに、雨の冷たさが染みていく。
しとしと、しとしと。
降り続く雨が、髪を、カッターシャツを、濡らしていく。
「離して」
「……無理」
「はなしてっ」
「嫌だ」
「は、なして……よ……っ」