濃紺に染まる赤を追え。
わたしは自分が桐谷と正反対の位置にいることくらい、分かっているつもりだ。
だからこそ、惹かれたんだ、きっと。
予鈴が鳴れば、ナミさんは何事もなかったかのように自分の教室に戻っていく。
それと入れ代わるように、堤くんがわたしの前の席に着いた。
「あ、堤くん」
「ん?」
「これ、ありがとう」
ふと思い出して、写し終えた物理のノートを渡せば、堤くんは。
「どういたしまして」
にっこり笑って受け取った。
そのあとちょうど、授業開始のチャイムが鳴り、待ち構えていたかのように教室に入ってきた先生を見て、堤くんは眼鏡をかける。
わたしは、ストライプ柄のシャーペンをカチカチ鳴らす。
“忠告”か。
さっきのナミさんの言葉に、自嘲するような笑みが漏れた。
今さらもう、戻れないよ、と。