濃紺に染まる赤を追え。
――――――――――――――
――――――――――
放課後。
ひとり、教室に残り日誌を書く。
堤くんは戸締まりチェックだけして、部活に行った。
すでに3年生は引退している部活も多いけれど、野球部の引退はまだらしい。
日付を書き込み、天気のところには晴れ。
「欠席、遅刻、早退はなし、と」
呟きながらも、その欄に書き慣れた名前を入れる。
“14席 桐谷蓮”
その隣に小さく、さぼり、と書く。
自分の書いたその文字に自然と笑顔になってしまったことに気付いて、きゅっと顔を引き締めた。
「一限目古典、二限目数学、……」
三限目物理、と書き込んだら、脳裏にグリーンのカーディガンがちらついて。
どうしようもなく、嬉しくなって、また緩みそうになる頬を両手で包んだ。
視線を窓の外に移す。
まだ空は青い。
明るいうちに帰ってしまおうと、適当に他の欄を埋めて席を立った。
スリッパをぺたぺた鳴らして、廊下を歩く。
生徒のほとんどは帰っていて、わたしの足音だけがやけに響いた。