濃紺に染まる赤を追え。
「……なんだかなあ」
「……なに、爽やか好青年」
二人が去っていったあと。
教室に残されたのは、また異色の組み合わせ。
「いや、綺麗にいいところだけ持って行かれたなー、と思って」
「仕向けたのあんたのくせに、後悔してるんだ?」
「んー、どうだろ……」
しばらくの沈黙のあと、口を開く。
「後悔してないって言ったら嘘になるけど、……でも」
「……なに」
始業まで、あと数分。
生徒はちらほらと、席に着き始めていた。
「あんなに幸せそうに笑ってくれたら、それだけで十分だよ」
そう、笑った。
「そっちはどうなの」
「は? なにが」
「ずっと松村のこと止めようとしてたよね」
チッと聞こえた舌打ち。
気付かれていたことが気に入らなかったみたいだ。
「別に。あの子が悲しまなければそれでいいんじゃない」
「何だかんだ、松村のことを思ってたんだ」
「……うっせ。つか、あんた暇でしょ、これ剥がすの手伝って」
「うわ、人使い荒いなー……。ってあれ、これもう集まったんだ?」
「ん、そう」
二人分の指が机の角で音を立てる。
赤く塗られた爪をした指が、そこに貼られていた点数シールを器用に剥がし、自分の手の甲に貼った。