濃紺に染まる赤を追え。
「……まあ、でも」
「ん?」
「あんたなかなか良い物件だし、そこら辺に転がってるよ、次の相手なんて」
「はは、慰めてくれてるんだ? ありがとう」
ぺたり、最後の一枚を手の甲に貼る。
「ま、現に相手候補いるしね、ここに」
「……え、?」
チャイムが鳴った。
にやりと笑顔を残してドアの向こうに消えた後ろ姿を。
学年一位の優等生が、ぽかんと口を開けて眺めている姿は、さぞ滑稽だったことだろう。
「ちょっと、桐谷」
引っ張られながら、階段を上る。
掴まれている手首の温かさに、幸せだと思わずにはいられない。
「ねえ、桐谷ってば」
たんたん、たんたん。
二人分の足音が階段に響く。
斜め後ろから見える桐谷の口元は、笑みを浮かべていた。
「明日から一緒にさぼるの無しね」
「え、なんでー?」
「だってわたし、授業受けたいし」