濃紺に染まる赤を追え。
ごそごそとスカートのポケットを探り、いつもの直方体を取り出す。
こんな暑いときに、よくこんな甘ったるいのを食べられるね。
そう思いながら差し出すと、包み紙取って、と注文が入る。
「はい、」
従順に白っぽい包み紙を取り、桐谷の手の平に乗せようとすれば。
「よっこ、よっこ」
「……ん?」
自分の口を開けて、指差す桐谷。
……なにそれ、あーんしろってこと?
眉間にしわを寄せて首を傾げると、桐谷はにっこり、笑ってみせる。
「……えー……」
「はやくー、待ってんだけどー」
語尾を伸ばして急かす。
そんな桐谷に大きく溜め息を吐き、しばらくキャラメルと睨めっこ。
「よーっこ」
「あー、もー……」
きつくなる腕の力に、逃げることは出来ないのだと悟る。
意を決して、そっとキャラメルをその口元へと運んだ。
羞恥心と戦いながら、半ば放り込むように指を離す。