濃紺に染まる赤を追え。

君の恋路に幸あれと






最近少し、面白くない状況を目にする。


「よっこー、ここ教えてー」

「えっと、これはこの公式を使って解くと、こうなって……」


夏休みも終わった九月。

受験がどんどんと迫ってきて、教室の空気も変わってきている。

と言っても、指定校推薦だったりAOだったりですでに決まった人も多く、どちらかと言うとまだ受験がある人と終わった人とで空気が違うといったところだろうか。


前の席で勉強している松村は、俺と同じく国公立狙いだ。

志望校は違うけれど、ノートの貸し借りをしたり、分からないところを聞き合ったりして、ずっと一緒に勉強してきたといっても過言ではない。


それはいい。

問題はその松村の隣に引っ付いているやつだ。


「ってなるの。分かった?」

「びみょー」

「え、どこ? どこ分かんない?」

「んー、全部?」

「ちょっと、真面目に答えてよね」

「はーい」




< 171 / 192 >

この作品をシェア

pagetop