濃紺に染まる赤を追え。
屋上は今日も空に近い。
「……どうしたの」
「どうしたのじゃないし」
「腕痛かったよ」
「……うん」
「ちなみに背中も痛いよ」
「……ごめん」
コンクリートの上、日が当たっていたそこは温かいけれど、肩甲骨が当たって痛い。
太陽の光でシルキーアッシュの髪は透けてきらきらとしていた。
「桐谷、怒ってるの」
「怒ってるよ」
「さっきの、おでこ?」
そう尋ねれば、無言で額に桜色が降ってきた。
ちゅ、と小さく音を立てて離れていく。
「上書き」
ぼそりと呟いたテノールは、心地よく耳に響く。
桐谷が屋上に行こうとしていることは分かっていた。
ちょっと怒ってるんだろうなってことも想像できた。
だけど、これは。
「桐谷」
「……」
「きりたに」
「……なに」