濃紺に染まる赤を追え。
そう気付くと、急に笑いが込み上げてきて。
「このコロッケちょーだい」
「え? ……どうぞ」
いいのかよ。
からかおうと思って指差した弁当箱の中身。戸惑いながらも頷いた学級委員。
状況も理解できていないのに拒否しないことが可笑しくて、その日から昼休みはあの子を観察するようになった。
それがもう、一年以上も前のことになるとは。
「あんた、そりゃ教室でそんなことしたら注目されるに決まってんでしょ」
「もっと慰めるような言葉かけてよ……」
そして今、目の前にいるのは落ち込み気味の爽やか好青年。
昼休みになって隣の教室に来てみれば、あの子がいなかった。
まあさっきの休み時間、蓮に連れられてどっか行くところを見たから、どうせイチャついてるんだろうけど。
しかしどうやら、今回の逃避行は爽やか好青年のちょっとした反抗が招いた結果らしい。
この学校だったら額にキスしたくらいでそこまで注目は浴びないだろうけど、相手が蓮の彼女だから仕方ない。
「つか、あんた頭回らなかったわけ? いつもはもっとTPOを考えるでしょ、てぃーぴーおーを」
「うん、ちょっと考えが足りなかった」
「あっそ、まあどうでもいいけど。あんたまだ未練あったの?」