濃紺に染まる赤を追え。
シルバーリングが眩しくて
「“何でも言うこと聞く券”?」
首を傾げると、桐谷の桜色は妖艶に弧を描いた。
三限目、屋上。
どうしてこんな話になったかといえば、ことの始まりは今日の朝。
「……え、今日?」
「なに、あんた知らなかったの?」
「はあ、まあ……」
「うわー、彼氏の誕生日知らないとかまじないわー」
堤くんの席を陣取ってそう言ったナミさん。
そう言われても、付き合い始めたのはつい最近だし。
「あんたもそう思うでしょ?」
「え、俺?」
いきなり話を振られて驚いたように顔を上げた堤くんに、ナミさんは頷く。
「彼女に誕生日忘れられてたら、どうよ?」
「えっと、……ショックかな」
「ほらね」
苦笑いを浮かべる堤くん。
やっぱりそうなのか、と落胆していると。
「何も用意してないんだったら仕方がないけど、一応おめでとうは言ったほうがいいんじゃないかな」
堤くんは爽やかに笑って、そうアドバイスをくれた。
で、桐谷におめでとうってことと、プレゼント用意してないってことを告げたら、冒頭に戻るわけだ。