濃紺に染まる赤を追え。
探していたのは君だった
愛着障害、というものがある。
幼少期に何らかの原因で養育者から愛を受けられなかった場合に発症するという。
講習会でその症状を聞いたとき、一人の生徒の顔が浮かんだ。
「せんせー、頭痛が痛いです」
「桐谷、それ日本語おかしいよ」
三限目。
そう言い訳しながら保健室へやって来た二人を見て、思わず笑みがこぼれた。
「あらまあ、雨降ってきたの?」
「えっと、あの、……はい」
すみません、と謝る陽子ちゃんは、真面目で利発で、他の先生からの評判もいい。
「せんせ、ちょっと寝させて」
お願い、と手を合わせる蓮くんは、入学当初から問題児として有名で、雨の日にはよくここに来ていた。
そして、気になっていた生徒の一人だった。
「今誰もいないし、適当にベッド使っていいわよ」
「え、……いいんですか?」
「だめって言っても聞かないでしょ、特に蓮くんは」
「はは、ばれた」