濃紺に染まる赤を追え。
誰に対しても友好的で、社交的に見える蓮くんには、脱抑制型の愛着障害の可能性があるのではないかと思っていた。
その蓮くんが今、随分と穏やかな顔をしているのはきっと陽子ちゃんのおかげだ。
「ほら、よっこも」
「え、わたし別に眠たくない」
「昼寝しよーよ、だめ?」
「うー……」
毎日自分のことを探しに来てくれたという事実。
自分のことを想ってくれる陽子ちゃんの真っ直ぐさ。
それらに心を動かされたんだと思う。
「本当、よかったわねえ」
二人が並んだ姿を見て、しみじみと感想を漏らせば。
蓮くんは自慢げに、陽子ちゃんは恥ずかしそうに、笑った。
彼女はよく、彼のことを探しに行くと言っていた。
でも。
探していたのは、本当は彼のほうで。
愛されることに飢えていた彼は、ようやく心の拠り所を見つけたのではないか、と。
―fin―
(雨の日の保健室で、養護教諭は思う。)