濃紺に染まる赤を追え。
それを見て、満足げに瞳を細める。
耳に光るルビーのようなピアスが、その横顔に似合う。
桐谷は、そういう人だ。
「よっこが来たってことは、もう三限目か」
「うん、そう。物理」
わたしは、風でめくられないようにスカートの裾を心持ち引っ張って、体育座りをした。
隣で、桐谷はあぐらをかきながら一度伸びをしたあと、空を見上げる。
「優等生な学級委員さんは大変ですね」
「寂しがりのさぼりくんを毎回探しに行かされてね」
言い返せば、くすっと喉元で笑う。
声に出して笑わないのは、計算してのことだろうか。
その艶やかな笑い声に鼓動が狂う。
「今日も二つ結びじゃん。ゆーとーせー」
「伸ばして言わないで。阿呆っぽく聞こえる」
「ふーん」