濃紺に染まる赤を追え。
「嘘でしょ」
「まじです」
そんな馬鹿な。
どうしてわたしたちが巻き込まれなきゃいけないんだろう。
本当、いい迷惑だ。
「まあ、内申上げてくれるって言ってたし、とりあえず二限目は俺行ってくるよ」
「あ、うん」
爽やかに笑い、ドアの向こうに消えた後ろ姿。
入れ代わるように教室に来た先生に事情を説明すれば、とくに突っ込まれることなく済んだ。
こういうとき優等生だと楽だな、なんて。
そんなことを頭の片隅で考えた。
堤くんが再びため息を吐いて戻ってきたのは、二限目終了後。
ざわつく休み時間の教室に、疲労感溢れる堤くんは、どことなく異質だった。