濃紺に染まる赤を追え。
「駄目。全然見つからない」
「お疲れさま」
短く言葉を交わし、堤くんは席に着く。
わたしはその様子を横目に、引き出しからノートを取り出した。
「堤くん、これ、さっきのノートなんだけど」
こんなので良ければ、と渡すと、堤くんはやっぱり爽やかに笑い、
「お、ありがとう」
と受け取った。
嫌味のない笑顔は、見ているこっちに不快感を与えない。
「じゃあ、三限目はわたしが行ってくるね」
「うん」
それだけ言って、席を立った。
教室の外に出ると、まだ騒がしい廊下。
徐々に教室へ戻ろうとする人波に逆らい、とりあえずわたしは一番最初に頭に浮かんだところへと足を進めた。