濃紺に染まる赤を追え。




「油断した、三限目はもう来ないかと思った」


呟き、寝転がる。

空を見つめながら、桐谷はまた口を開いた。



「で?」

「え?」


「どうすんの?」



何を、と聞こうとした瞬間。




視界は桐谷でいっぱいになっていた。


押し倒されたのか、肩甲骨あたりがコンクリートにあたって痛い。



それより、この状況はなに。



組み敷かれている、と理解するのに所要時間は3秒。


「どうしてほしい?」

「……は?」


戸惑いの声を上げる中、すでに赤のリボンはプチッと小さな音を立てて外れていた。



いやいやいやいや、ちょっと待って。

なにこれなにこれ、なんなのこれ。

わたしはただ、豚まんに言われて探しに来ただけなんだけど。

やっぱり遊び人っていう噂は本当だったわけだよね、そうだよね。

え、なに、そういうこと?

うそ、えっと、そんな簡単に?










「……ふはっ」




不意に頭上から聞こえた笑い声。

と、同時に手首を握っていた力が緩まる。

戸惑いを隠せずにいると、そのままゆっくり引き起こされた。



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