濃紺に染まる赤を追え。
口実ノートは誰のため
「きーりーたーにー」
「……」
屋上は、今日も空が広い。
穏やかな風が吹いている。
いつも通りいつも通り、と自分に言い聞かせながらぎゅっと手を握った。
「ちょっと、聞こえてるんでしょ」
「……」
「桐谷ってば」
ギイ、バタン。
後ろ手でドアを閉めると、振り向いた桐谷。
「今いいとこだから、しー」
人差し指を口元に当てるだけの仕草に、頬が一気に染まるのが分かった。
心臓を落ち着かせながら、その右隣に駆け寄る。
「……こんにちは」
「うん」
「何してんの?」
「ん? ゲームだけど」
「またそんな18禁を……」
そう言いながら腰を下ろすと、別にエロゲじゃないから、と聞こえた声。
「普通にRPGだし」
「へえ、桐谷がそんな健全なの持ってるの」
「……よっこは俺を何だと思ってんの」
「んー、女好きの遊び人?」
皮肉を込めて言ってみれば、あながち間違いじゃないけど、と笑った桐谷。
その視線はゲーム機に向けられたまま。
わたしはスカートの裾を引っ張りながら、そういえば、と思い出す。