濃紺に染まる赤を追え。
「桐谷」
「ん?」
「キャラメルいる?」
スカートのポケットを探り、そう問うと、視線はゲーム機のまま伸びてきた手。
その上に置いてあげると、包み紙取って、なんて注文が入る。
呆れながらも、白っぽい包み紙を取って渡した。
それが桐谷の口に消えていくのをぼんやり見つめる。
「また豚まんに貰ったんだ?」
「うん」
頷くと、いきなり始まったボタン連打。
指の動きが速すぎて恐ろしい。
ラインを送るナミさんの指の動きよりも速いんじゃないだろうか。
剥げかけたネイルを纏った指を思い出して、比較しながらそれを見ていると、
「うわ、ゲームオーバー」
桐谷は意気消沈したように呟き、ゲーム機を置いた。
「っていうかね、ゲーム機持って来たら駄目だよ」
ふと気付いて注意すると桐谷は唇を尖らせた。
「えー、見逃してー」
「わたし一応学級委員なんだからね」
「よっこー」
駄々をこねる子どもみたいな桐谷に、思わず笑ってしまいそうになる。
「よっこ、お願い」
きっとそんなわたしの表情に気付いたのだろう。
甘えるように覗き込んで、そう囁くテノール。