濃紺に染まる赤を追え。
「ここまでやられたら、赤点なんか取れないなと思って」
……わたしの心臓止める気か、こいつ。
そんなことを思いながらも、あっそう、とか無愛想すぎる返事をする。
「じゃあせいぜい頑張ってよ」
「んー、ゲーム機没収は嫌だしなー」
そんな肯定とも否定ともとれる声。
素っ気ないふりをしたいのに、顔が赤くなるのが分かって、そっと視線を下ろした。
代わりに視界に入ったのは、はだけた胸元のカッターシャツ。
そこから覗く無数の赤い跡に、現実に引き戻された。
昨日、あんなものを見たというのにノートを作ったのは、もう分かりきったことだと思ったから。
いちいち反応していてもキリがないと思ったから。
それは一種の諦めであり、わたしなりの開き直りでもあった。
でも。
この中に、昨日の女の子のものも混ざっているのかな。
そう考えてしまうと、苦しくて仕方ない。
桐谷は本当にタチが悪い。
持ち上げておいて、容赦なく落としていく。
わたしは何回落とされたら気が済むんだろう。