濃紺に染まる赤を追え。
「多分、三年になったときに事務員か警備員かよく分かんねーけど、代わったんだよ」
「へえ……?」
「最近、屋上まで見回り来てないと思う」
「……え」
それってどうなの。
学校の管理体制大丈夫なの。
不信感が募ったものの、
「まあ、鍵しなくていいの楽だし」
桐谷は呑気に欠伸をした。
そのルーズさに呆れて、苦笑を浮かべていると、不意に切れ長の瞳がこっちを向いた。
「四六時中ここ開いてるし、よっこが来たかったらいつでもおいで」
ふわり。
見せた笑顔は無自覚だろうか、計算だろうか。
どちらであったとしても、赤くなる頬を止める術はなく。
「……来たくなったらね」
わたしはまた、可愛いげのないことを口走るのだった。