濃紺に染まる赤を追え。



するといきなり、わっと騒がしくなった教室。

何かと思えば、また教室の中央のグループ。


「やっぱみんなで再試パターンだよねー!」

「当たり前じゃん、蓮ともいっぱい話せるし!」

「全教科再試受けてやるわ!」

「ぎゃはは、まーじーでー?」


手を叩きながら、高らかに笑うその集団。

ナミさんがさっき言ってたのは、あの子たちみたいな人がいっぱいいたってことだろうな。


ぼんやりとそう思って視線を戻すと、新たに視界に入ったのはたこさんウインナーをつまむ指。


「ちょーだい、これ」


頷く間もなく、ナミさんの口に葬られる。


えー……、なにその独裁主義……。

非難の視線を向けてみるが、ナミさんは


「あ、またネイル剥げてる」


とマイペースに呟く。

まあ、いいけれど。

呆れながらもご飯を口に運んでいると、不意に見えた男子の集団。

その中にいた、堤くん。

わたしは高速で口を動かして、ご飯を飲み込み、引き出しの中からノートを取り出した。

お箸を置いて、そのそばまで駆け寄る。


「堤くん」

「あ、松村」


ちょんちょん、と控え目に肩を叩くと、こっちに向けられた視線。


「これ、ありがとう」

「おー、いいよいいよ」


借りていたノートを返すと、堤くんは爽やかに笑う。





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