濃紺に染まる赤を追え。



そしてまたお弁当を食べようとお箸を持てば、感じた視線。


「……なに、ナミさん」

「んー」


一度考えるようにそう言って、そしてまた口を開く。


「あんた、やっぱりああいうのと合うと思うけど」

「ああいうの、って……堤くん?」

「そう、さっきの爽やか好青年」


頷き、わたしのお弁当から勝手にミニトマトを奪う。

最後に残しておいたのに、なんて苦情を抱きながらも、首を傾げる。


「付き合う気ないの」

「いや、堤くんはそういうのじゃないし」

「ふーん、あっそ」


赤い爪を携えた指が、ミニトマトを口に運んだ。

ナミさんの口に消えていくそれに、若干の名残惜しさを感じる。


「そういうのじゃない、か」


わたしの言葉をぼんやり、確認するように復唱する。

また教室の中央あたりが、わっと湧いた。





< 64 / 192 >

この作品をシェア

pagetop