濃紺に染まる赤を追え。



「全然いいと思うけど」

「んー、そうかな」

「それに、また学年総合一位だし」


その文字を指差して言えば、まぐれだよ、と呟いた。

堤くんが言うと嫌味っぽく聞こえないから不思議だ。


「おーい松村、早く取りに来い」


豚まんのそんな声に、自分の番までまわってきていたことを知る。

急いで教卓に取りに行くと、今回もなかなか良かったぞ、といらない報告をされた。

そういうのは自分で見たいんだけど、と思いながら愛想笑いを返し、席に着く。


「どうだった?」

「うーん、いつもと似たような感じかな」


曖昧に笑いながらそう言う。

少なくとも堤くんより悪いのは確かだ。



「採点ミス見つけたら、明日の放課後までに各担当の先生に言いに行くことー。いいか、明日の放課後だからなー」


念押しするようにそう言う豚まんの声を聞きながら、解答用紙を見つめる。


周りのみんなは、見直しなんてそっちのけで、何点だったか言い合っていて。

歓喜の声や落胆のため息がそこら中にあった。


あと一点上がらないか、と真面目に見直しているのは、わたしと堤くんだけのようなものだった。




そんなとき。









喧騒を切り裂くように、教室のドアが開く音がした。





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