濃紺に染まる赤を追え。
――――――――――――――
――――――――――
久しぶりに、この光景を見た気がする。
「れーん」
「蓮、キャラメルあげるっ」
「好きだって言ってたでしょ?」
わたしと対角の位置にあるその席は、人で溢れ返っていた。
それはまるで、スーパーのタイムサービス並に。
入口付近だというのに、通行不可だ。
「……すごいな」
「……ね」
堤くんと肩身狭く、そこを眺める。
集団の中心にいる桐谷は、ちらちらと女の子の間から見えては隠れ、隠れては見える。
何日かぶりのその姿は、相変わらずだった。
「あ、そうだ」
「ん?」
ちょっと待ってね、と言いながら鞄を探る。
「あったあった。これ、ありがとう」
そう言って差し出したのは、借りていた本。
テストが終わってすぐに読んだ。
「あー、いえいえ」
「今回のすごく面白かったよね」
「うん、珍しくサスペンスっぽい感じだったしな」
「わたし、二人が公園で襲われかけたところ好きだな」
「分かる分かる、すごい冷や汗かいたんだけど」
「わたしもだよ」