濃紺に染まる赤を追え。




微笑んで頷くと、その倍くらいの笑顔を返された。

やっぱり爽やかだ、と思いながらも話すことがなくなったので、目を逸らして再び入口付近の集団へと視線を戻す。


すると。




「……え」





時が止まったような感覚がした。




……桐谷が。


桐谷がこっちを見て、……る?





視線が交わったような気がしたのは一瞬で。

というか、桐谷のことを見ていたと思われるのが嫌で、咄嗟に目を逸らしたから実際はどうだったのかよく分からない。



でも、しばらくしてからもう一度集団に視線を戻したとき、桐谷はこっちを見てはいなかった。






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