濃紺に染まる赤を追え。
気のせい、だろうか。
いや、もしかしたら。
……なんて、期待が心の中に芽生える。
でも、そんなのは無駄だとどこかで分かっていて。
膨らむ前に、それらは摘みとる。
「蓮」
「ねえ、蓮」
「れーんっ」
綺麗な女の子たちは、次から次へとやって来て、彼のシルキーアッシュやルビーやグリーンやシルバーに触れながら、一言二言交わしていく。
きっと彼女たちは皆、あの桜色に愛されたことがあるのだろう。
そして、わたしは。
あの輪の中に入っていく勇気もないくせに、そんな期待はするなと。
自ら警鐘を鳴らし、自分が受ける絶望を軽減するのだ。
桐谷は緩やかに口角を上げながら、その端整な笑顔を後ろから見ていても分かるくらいに振り撒く。
そして、一言二言交わした後、決まって首を縦に振るのだった。
「なんか、桐谷ってさ」
不意に声がして視線だけ動かすと、堤くんが向こうに目を向けたまま言った。
「来るもの拒まずって感じだよな」
独り言のような呟きに小さく頷く。
「そう、……だね」
もう一度桐谷へと視線を向ける。
女の子たちの間から見えた彼は、また得意の笑顔で頷いていた。