濃紺に染まる赤を追え。
「ふーん、蓮にノート作ってあげたやついるんだ」
呟き、身体ごとこっちに戻してナミさんが言う。
口の中に残っていたスパゲッティーを飲み込む。
「そうみたいだね」
平静を装ってみるものの、声が少し裏返った。
バレたかな、とナミさんを盗み見るけれど、さして気にした様子もなくチョコデニッシュを頬張っている。
それに安堵の息を吐いたのも束の間。
「蓮に媚び売ってる女の中に、そんな頭いいやつっていたっけ」
「……、いるんじゃない?」
「つか、蓮が再試逃れるくらいでしょー。よっぽど分かりやすくないと無理じゃね?」
どうでもいいけど、と言ってわたしのお弁当を覗き込む。
心臓が跳ね上がったけれど、どうにかこうにか落ち着けて、ブロッコリーをつまんだナミさんに、どうぞ、と頷いた。
入口付近の集団は、いまだに騒がしい。
「誰が作ったの?」
「全部覚えたとか、蓮すごーいっ!」
「えー、ショックー」
様々な声が飛び交う中、不意に聞こえたテノール。
「あ、俺このバンド好き」