濃紺に染まる赤を追え。
「俺の親は忙しい人達」
「忙しい……?」
「バリバリの仕事人間」
皮肉るような口調に、諦めを感じる。
でも、その中には寂しがりの幼い桐谷の影を見たようで。
そう思えば、ただの拗ねている子供のようにも思える。
「基本的に放置されてたかな。家庭より仕事って感じだから」
「小さい頃から?」
「そう、昔から」
耳元で風が唸る。
緩やかな風は、照り付ける太陽を和らげる。
「構ってもらいたくて、昔はテストとか頑張ったりしたけど全然反応なし」
「……へえ」
「ほとんど家にいないし、報告も出来ないから意味ないんだけどな」
ぼんやりと呟く。
だから彼は人の温もりを求めるのだろうか。
偽りの笑顔を顔に貼り付け、愛を囁くのだろうか。
「そっかー……」
それ以上、突っ込んで聞くことも、下手に何かを言うことも出来ず、ただ相槌を打つ。
だけどちょっとだけ、周りの女の子たちより桐谷を知った気になった。