濃紺に染まる赤を追え。
でも、よくよく考えてみれば。
わたしみたいな、ただの学級委員だけに話してくれるわけがなく。
とくに気にした様子もない桐谷を見ると、もう周知のことなのかもしれない。
曖昧だったけれど、そういうような噂もあったわけだし。
簡単に浮かれていた自分が浅はかに思えて嘲笑が漏れた。
「そういえば」
「……?」
隣で落ちた言葉に、続きを促すように首を傾げる。
「よっこって、あいつと仲良いな」
「……あいつ?」
「あの、ゆーとーせーっぽい男」
空と話しているかのように仰ぎながら言う桐谷に、わたしの頭に浮かんだのは一人。
「あー……、堤くん?」
「多分それ」
さっき空を横切っていった飛行機が、自らの存在を主張するように残した飛行機雲。
ぼんやり、霞み始めたそれを眺めてみる。
「なんでいきなり?」
「んー……」
しばらく目を細めて風を受けていた桐谷は、ふとわたしに視線を向けた。
「昨日よっこに、目逸らされたから」
聞こえたテノールに、やっぱりあのとき見られていたのだと知る。
そして、目が合っていたような気がしたのも、錯覚じゃなかったと。