濃紺に染まる赤を追え。
言いよどむわたしを一瞥して、ナミさんはチョコデニッシュの袋から点数シールを器用に剥がし、またわたしの机に貼った。
「ナミさん、それ、いつまでそこに……」
「あ?」
「シール」
「あー、そうだ。応募用紙貰わないとー」
貰ってくるまでずっと貼っておく気だろうか。
そんな予感が過ぎったけれど、気付かぬふり。
自分のお弁当に視線を落とし、どれから食べようかな、なんて考えていると、わっと湧いた教室。
ちらり、見ればいつもの中央あたりのグループ。
「今日の放課後会うの?」
「いーなー、最近蓮不足なんだけどーっ」
「あたしもー」
甲高い声で交わされる会話。
さっきの電話はあのグループの子が掛けてきたんだろう。
つくづく思う。
あの子たちはみんな桐谷に愛されたことがあるというのに、よく喧嘩にならないなって。
同じ人を好きだというのに、よく一緒にいられるなって。
でもそれはきっと、彼女たちが本気じゃないからなんだろう。
みんなが興味本位で桐谷を取り囲んで、桐谷についての情報を共有して。
それが彼女たちのコミュニケーションのひとつでもあるんだろう。
わたしみたいに恋焦がれているのは、きっと異質なんだ。