濃紺に染まる赤を追え。
「ちょーだい」
「……あ」
そんなことを考えているとお弁当からかぼちゃコロッケが消えていた。
べつにいいけれど、と頷いたときにはもうナミさんは口をもぐもぐと動かしていた。
そして、その指を拭わずに雑誌をめくる。
汚いと思うけれど、おばちゃん発言だと笑われそうだからやめておいた。
「あー、ほら見てみなよ」
「……?」
突然目の前に、ずいっと差し出された雑誌。
近すぎて上手く焦点が合わず、少し身体を引く。
見せられたのは白黒のページ。
円グラフや文字が並ぶそれは、何かのアンケート結果のようにも見える。
「『彼氏に求める条件』の三位に将来性がランクインしてんの」
「それどの世代が対象の調査なの」
「まじ勿体ないわ、有り得ねー」
「……」
「それにあんた、一位って何か分かってんの?」
ふわりと甘ったるいバニラの匂い。
ナミさんの香水はまだなくならないみたいだ。
「自分を好きでいてくれること、だってさ」