黒十字、邪悪なり
…そうやってセシル達が浮かれている頃。

中国地方の東端に位置する、中核市。

約46万人の人口を擁する備後都市圏の中心都市。

この都市の交通の大動脈である国道に、数多くの車が渋滞している。

丁度帰宅ラッシュの時間帯だ。

夕暮れの中、ノロノロと亀の歩みの如く進む車。

営業風のスーツを着た会社員が、愛車のハンドルに前のめりに寄りかかって、緩和しない渋滞に苛立ちを露わにしている。

早く帰宅したい。

このままじゃあ日が暮れてしまう。

そう思い、フロントガラス越しに空を見上げると。

「?」

ポタポタッ、と。

滴がフロントガラスに滴り落ちた。

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