黒十字、邪悪なり
程無くして、セシル達の乗るヘリが都市に到着。

「ひでぇ…」

窓から街の様子を眺めた隊員の一人が、思わず呟く。

街のあちこちから上がる黒煙、火の手。

地上で蠢く人影は、全てゾンビかグールだ。

既に生き残った人間は地上にはいないのか。

極度の空腹に耐えかねて、共食いを始めている。

人間だったものが、人間だったものを食う。

カニバリズムの極地。

地獄絵図でなくて何だろう。

これまで凄惨な戦場を潜り抜けて来た怪異駆逐対策局の面々でさえ、思わず閉口してしまうような惨状だった。

< 117 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop